ハロウィンの日、フリットウィック先生の授業で、とうとう物を飛ばす練習をすることになった。 みんなはワクワクしながら二人組みになった。 はパーバティ・パチルと組んだが、ロンはなんとハーマイオニーと組むことになってしまった。 「ウィンガーディアム・レヴィオーサー!」 みんな一生懸命に杖を振るが、なかなか羽根は浮いてくれない。 ハーマイオニーはロンの発音が間違っていると指摘し、機嫌を益々悪くしたロンは「そんなによくご存知なら、君がやってみろよ!」と怒鳴った。 ハーマイオニーは難なく羽根を浮かし、先生に褒められていた。 授業が終わった時のロンの機嫌は最悪で 「だからあいつには誰だって我慢できないっていうんだ!まったく悪夢みたいなやつさ!」 と悪態をついた。 それを聞いてしまったハーマイオニーは流石にこたえたらしく、その次の授業には出てこなかった。 心配したは昼食の前にパーバティーにハーマイオニーの居場所を聞いた。どうやら女子トイレで泣いているらしい。 は女子トイレに向かった。 女子トイレの個室からはシクシク聞こえる。 「ハーマイオニー?」 「・・・・なの?」 「ええ・・・・・ねえ、ロンの言ったことなんて気にすることないわよ。 あのときは機嫌が悪くて、つい心にもない事を言ってしまったんだと思うわ。」 「・・・・・・・・・。」 「大丈夫よ、あなたが悪夢じゃないことは、私十分知ってるわ!悪夢はあんなに優しく、判り易く勉強を教えてくれないもの。」 「・・・・ありがとう、。でも、こんな顔じゃみんなに会えないから・・・・」 「わかった。じゃあ、顔の浮腫みがとれたら、出てきてよ? 今日の夕食はきっと、とても豪華だから食べなきゃ損よ?私、ハーマイオニーと一緒にパンプキンパイが食べたいわ!」 「わかったわ。」 ハーマイオニーの声に少し張りが出たので、は昼食に向かった。 でも、午後の授業になってもハーマイオニーは現れなかった。 は彼女を気にかけながらハリー、ロンと一緒に夕食に向かった。 パーバティとラベンダーの話を小耳に挟んだハリーとロンは、ハーマイオニーのことを少し(!)気にしているようだった。 「ねえ、ロン?あなたの気持ちも分かるけど、あの嫌味は大層なものだったわよ?」 ロンはバツの悪そうな顔をしたが、大広間の見事なハロウィンの飾り付けを見たとたん忘れてしまったようだ。 みんなが美味しいご馳走に舌鼓をうっているとクィレル先生が全速力で大広間に駆け込んできた。 ダンブルドアの前まで行くとあえぎあえぎ言った。 「トロールが・・・・・・地下室に・・・・・・お知らせしなくてはと思って」 クィレル先生はその場でばったり気を失ってしまった。 大混乱の中、ダンブルドアが監督生にすぐさま自分の寮の生徒を引率し寮に帰るように指示した。 寮への階段を上がる途中では二人の腕を掴んだ。 「ちょっと待って、ハーマイオニーが!彼女トロールのこと知らないわ!連れてこなきゃ!」 二人は少し考えていたが 「わかった。だけどパーシーに気付かれないようにしなきゃ」 達はヒョイと屈んで反対方向へ進んだ。 はハリー、ロンと一緒にハーマイオニーのいる女子トイレに向かったが、途中でハッフルパフの集団に行く手を阻まれ、二人を見失ってしまった。 集団に巻き込まれたお陰と校内の構造をよく覚えていないのとで、自分が何処にいるか分からなくなってしまった。 途方にくれながら歩いていると、鍵の掛かったドアを見つけた。 (ここを開けて進んだら、知っている場所に出るかもしれない。) はこの間ハーマイオニーに教えてもらった、施錠解除の呪文を唱えた。 「アロホモラ!」 呪文は成功し、ガチャンと音を立てて鍵が開いた。 早くハーマイオニーのところに行かなくっちゃ! は走り出そうとしたができなかった。 目の前には三つの大きな頭を持つ怪物が唸っている。 は知らないうちに四階の立ち入り禁止の廊下に来てしまったのだ。 しかも、の向かい側では何故かスネイプが三頭犬と対峙していた。 「貴様!入ってくるな!」 そう怒鳴られたがもう足は動こうとしなかった。 三頭犬はとスネイプ、どちらに攻撃しようか迷った挙句、狙いはに定まってしまった。 涎を撒き散らしながら三頭は牙を剥きに襲い掛かってくる。 「きゃーーぁぁぁっ!!」 「馬鹿者!何をしている!!」 スネイプはを庇い、覆い被さった。 の視界はスネイプの漆黒のローブに遮られ、目を開けているのか瞑っているのか分からなかった。 半開きになっていた扉に凭れかかるように二人は立ち入り禁止の廊下から脱出し、スネイプは急いで杖を振るとドアの鍵をかけた。 「貴様!ここで何をしていたんだ?!」 スネイプの顔は地獄の鬼だ。 「あのっ、ハーマイオニーが女子トイレにいるので、呼びに行こうと・・・・・」 はふとスネイプの足に気をとられた。 ズボンとローブは下のほうがボロボロで床には血溜りができている。 「先生!その足?!」 「このぐらいの傷でうろたえるな!」 「でもっ!!」 「いいか!我輩がここに来たということは誰にも言うな! もし、その軽い口が滑ったら、貴様の事は二度と見られないような悲惨な姿に変えてやる!」 スネイプのこれまで見たことのない剣幕に押されて、は声を発することができず、首を何度も縦に動かした。 スネイプは立ち上がると足を痛々しく引きずって歩き出した。 「無理をしないでください!肩を貸しますから!」 「要らぬ!」 「はやく医務室へ行かなきゃ!そんな風に足を引きずってたら、明日の朝になっても着きません!」 は強引にスネイプの脇をくぐり医務室へと向かった。 しばらく歩くとハーマイオニーの居る女子トイレに差し掛かった。 「もうよい!」 スネイプはなんだか騒々しい女子トイレの手前での肩を振り解くと、逆方向に向かって行ってしまった。 は急いで女子トイレに近寄ると、四メートルはある醜い姿をした(おまけにやたら臭い!)トロールが失神していた。 しかも、ハーマイオニーはハリーとロンを庇ってマクゴナガル先生に嘘の証言をしている! 普段の行いのよいハーマイオニーの言葉を信じたマクゴナガル先生は、ハーマイオニーから五点減点、ハリーとロンには、その運の良さにそれぞれ五点もらっていた。 マクゴナガル先生に解放された三人はを見つけると一目散に駆け寄ってきた。 「ハリー!ロン!ハーマイオニー!」 は三人纏めて目いっぱい抱きしめた。 「あぁよかった、本当に心配したのよ?」 は気が済むまで抱きしめると三人に言った。 「ほら、三人とも。あなたたち、お互いに何か言うことがあるでしょう?」 三人はお互いの顔を見もせず「ありがとう」というと、早足でグリフィンドール寮に戻った。 それ以来、ハーマイオニーは二人の友人になった。 はハロウィンの続きを談話室で楽しむとベッドに潜り込んだ。 (スネイプは私を助けてくれた。 あの状況だから仕方なかったのかもしれないけど・・・・) はスネイプにお礼を言っていない事に気付いた。 「近いうちに、挨拶に行こう・・・・」 は独り言を言って眠りについた。 |