翌日の夜、始業式のため大広間には全校生徒が集まった。
は教職員テーブルの端に座り、ダンブルドアの紹介を待つ。

新入生の組み分け儀式も終わりダンブルドアが挨拶をした。

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!
歓迎会を始める前に、皆に紹介しておかなければなるまい。
今年は異国より特別枠の新入生を迎えることとなった。遠く東の国、日本からやってきたじゃ。」

ギョロッと全校生徒の眼がに注がれた。

「彼女はグリフィンドール寮の1年生として共に学ぶ。生徒諸君、仲良くしてくれたまえ。」

は立ち上がりペコリとお辞儀をした。

グリフィンドール生からは「ひゃっほう!」とか「すてき〜!」とかの歓声とともに惜しげも無い拍手が、他の生徒からは中途半端な拍手が起こった。

ダンブルドアにグリフィンドールの席へ座るよう合図されると、ふわふわのウェーブヘアーが特徴的な女の子がこっちこっちと手招きした。

はその子の隣に座る。

「さて、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

出席者全員が拍手し、歓声をあげると、あっという間に目の前にご馳走の山が現れた。

「よろしく、ミス・!ハーマイオニー・グレンジャーよ!」

「よろしく、です。でいいわ。」

ハーマイオニーは握手するとブンブンその手を振った。周りに座っているグリフィンドール生にも挨拶をする。

ハリー・ポッターと名乗った黒髪のメガネ君は色白で痩せていて小さい男の子だ。

その隣に座っている赤毛のソバカス君はロン・ウィーズリー、鼻が高くてひょろっとしていた。
二人は既にとても仲良く話している。




素晴らしいご馳走、みんなとの会話。
は一人暮らしの寂しさを一瞬にして忘れた。

は何故ホグワーツに特別枠で入学することになったの?」

ハリーがポークチョップを頬張りながらに尋ねた。


「特別とは、何が特別なんだい?頭の良さ?」

「可愛さ?スタイルの良さ?」

同じ顔の二人が捲くし立てるように言った。

「「失礼レディ」」

「僕はフレッド・ウィーズリー」

「僕はジョージ・ウィーズリー」

「「双子の兄弟さ!以後お見知りおきを、レディ!」」

よっ、よろしく。と双子の雰囲気に圧倒されながら挨拶をした。

「で、何だっけ?
ああ、入学の理由ね?実は、よくわからなくて・・・・」

はここに来るまでの情けない経緯を話した。

「それで、気が付いたらここの森の前で寝てたの。第一発見者はスネイプ先生よ。」

「「そりゃ、運が悪かったね。酷い扱いを受けただろう?」」

同じ顔の二人が声を合わせていった。

「そりゃもう!あのときハグリッドがきて校長先生に話をしてくれなかったら、私は今頃ここにはいなかったわ。」

「「かわいそうにレディ」」

「スネイプには気を付けなされ」

「スネイプは減点魔だからね」

双子は喋るだけ喋ると黒人の男の子の方に行ってしまった。

「ダンブルドアでも、がここへ来た原因は分からなかったの?」

「うん、だからそれが分かるまではここの生徒として過ごせって。」

ロンは、これ以上は入らない!というほどフレンチフライを口に詰めて何とか聞き取れる言葉を発した。

「でもよかったね、僕たちと同じ年で。このクラスってきっと最高だぜ?!」

「いや、実は・・・・・」

は話していいものか躊躇ったが事実を知っている人が少しでも居る方が心強いと思った。と同時に、秘密の共有は親睦も深められる。

「みんなには内緒にしててね、本当は私・・・・・」

息を一層潜めた。

「21 歳なの。」



「うそ〜っ!!!!!」



「シーッ!!!」

「ああゴメン。でも全然見えないよ。東洋人って若く見えるって本当だったんだ!」
「しかも、私魔法なんて習ったこと無いのよ。教科書と杖は買ってもらってあるんだけど・・・。」

「心配しないで、教科書は全部暗記してあるわ!勉強は私が手伝ってあげる!」

「僕も魔法は全くの初心者だから心配しないで!」

「おいしいお菓子とチェスなら僕に任せて!」

「みんなありがとう。迷惑かけるかもしれないけどよろしくね!」

ふと教職員用テーブルに目をやると、スネイプがこちらを睨んでいた。それはへ向けられたものではなく、向かいに座っているハリーに対するものだった。ハリーもそれに気付いたらしい。

「ハリーはスネイプ先生とお知り合いなの?」

「ううん、全く初めて。何であんな目で僕を睨むんだろう・・・・・」

「大丈夫、ハリーだけじゃなく、私にも同じ目で睨むわ。
・・・それにしても凄い睨み方よね〜。きっと、眉間の筋肉をいつも鍛えてるんだわ!」

は眉間を何度も寄せて「こんな感じで」と言うとハリーは笑いながら、それは間違いないと頷いた。





デザートの糖蜜パイを食べ終えると、ダンブルドアは校内の森に入ってはいけないこと、クィディッチの予選が二週目にあること、最後に「とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません」とお知らせをした。

笑った生徒が少ないところを見ると、これは冗談ではないようだ。

監督生のパーシーは立ち入り禁止の理由を僕たち監督生には言ってくれてもよかったのに・・・と不満を漏らしている。

は方向音痴なわけではないが動く階段や擽らないと開かないドアには慣れていないので方向感覚が麻痺してしまう。
細心の注意を払って四階には近づかないようにしようと心に決めた。

寝る前にみんなで校歌を歌い、それぞれの寮へ帰っていった。

は昨日、グリフィンドール寮内の空き部屋に一人の部屋を宛がわれ、今年はそこで生活することになっている。

寮までの複雑な道順は一回で覚えられるほど簡単ではないので上級生から逸れないように気を付けて歩いた。

肖像画の裏の穴をとおり、談話室を横切り、女子寮と男子寮に別れてそれぞれの階段を上がった。



はどこの部屋?」

「私はこっち。昨日、余ってる部屋に一人で入らせてもらうことになったの。」

はハーマイオニーたちの部屋の向かい側のドアを指さした。

「たくさん勉強しなくちゃいけないからね。が夜中に煩くしてて、みんなが寝不足で授業にでることになったら悪いでしょ?」

「そうね、個室の方が私も気兼ねなく勉強を教えられるわ!」

すでにやる気マンマンのハーマイオニーだった。

「あっ・・・ありがと!じゃあ明日からよろしくお願いします。」

「任せておいて!」

おやすみといって部屋に入った。机には始業式の前まで読んでいた基本呪文集の1年生用が無造作に開かれていた。

は片付ける気力がなくバタリとベッドに倒れこんだ。




明日から授業が始まる。
これからどうなってしまうのか分からないが、しばらくはこの生活が続きそうだ。
は精一杯この奇跡を満喫しようと心に決めると、いつの間にか眠りについてしまった。