スネイプはの方は一切向かず、黙々と歩いた。

校舎を出てしばらく歩くと小さな町があった。

スネイプはその中の一軒(「三本の箒」と書かれた看板がさがっている)に入った。

「マダム・ロスメルタ、ホグワーツの公用でして、少々暖炉を貸していただきたい。」
スネイプは曲線美の女性に話しかけた。

「あら、スネイプ先生珍しい。いいですよ、二階の暖炉を使ってください。」
スネイプは足早に階段を上がると、一室の暖炉の前で止まった。

「これから、フルーパウダーでダイアゴン横丁まで行く。」

「フ・・・何ですって?」

「貴様は口を接ぐんでいればよい!」

話しかけたのはそっちなのに・・・・。
が何をしても気に入らないらしい。

「暖炉の中に入ってこの粉を振りかけろ。
そのとき、「ダイアゴン横丁」と叫ぶのだ。発音は正確にハッキリしろ。でないと何処に出るかは保障せん。
貴様が行方不明になっても我輩は探す気など毛頭ない。一際明るい火格子が見えたらそこから出ろ。」

スネイプは一気に言い終えると、を暖炉へ押し込んだ。

「やれ!」
はスネイプの迫力に押されて急いで粉を降りかけた。


「ダイアゴン横丁!」


闇の中をグルグルと回り、そこらじゅうを何かにぶつけながら進んでいくと、とても明るい四角が見えた。たぶん出口はあそこだ。

ズルッと暖炉から出た。煤を吸い込んで咳き込んでしまう、気分は最悪だ。

はフラフラしながら煤だらけで立ち上がった。

するとそこは、さっきまでの部屋ではなかった。どこかの店内のようだ。
立ち竦んでいると、程なくスネイプがパッと優雅に現れた。
と登場の仕方がまるで違う。

スネイプは煤だらけのを見ると満足そうに鼻で笑ってから「こい!」とはき捨てて店を出た。

見たことの無いものが沢山売られていた。
何に使うかわからない材料や鍋や箒。
何より行きかう人はみんな山高帽にローブという、いかにも魔女・魔法使いらしい格好をしている。
の服装はとても浮いていた。

「入れ。」

そこは洋服屋のようだ。

「はいはい、あなたもホグワーツ?じゃあ、そこの台の上に立って。」

有無を言わさず寸法を測られる。気付くとスネイプの姿は無かった。

「はい、いいですよ。明日が入学式でしょう?急いで仕立てるから1時間くらいしたらまた寄って頂戴。」

婦人はそう言うと忙しそうに奥へ引っ込んでしまった。
途方に暮れていると、スネイプが帰ってきた。手には沢山の分厚い本を抱えている。
「終わったのか?ではグズグズするな。」

鳩尾目掛けて強引に本の山を渡され、は咽ながら後に続いた。

「入れ。」

今度は何を売っているのかわからない店だ。棚には所狭しと細長い箱が並べてある。

「やあ、いらっしゃい。そろそろ御目にかかれると思っていましたよ。良く来てくれました。どちらが杖腕ですかな?」

「えっと・・・・私、右利きです。」

本の山を脇に置かせてもらうと、では・・・と老人は腕とそれ以外にも色々なところの寸法を測った。
老人は測りながら話を続けた。

「当店、オリバンダーの杖は一本一本、強力な魔力を持った物を芯に使っております。
そして、オリバンダーの杖には一つとして同じ杖は無い。
もちろん、他の魔法使いの杖を使っても、決して自分の杖ほどの力は出せないわけじゃ。」

老人はそれだけ言うと奥に引っ込んでしまった。
どうやらここは杖屋のようだ。振り返ると、また、スネイプの姿がなかった。





暫くして一つの箱を持って老人は帰ってきた。

「どうですかな?一角獣のたてがみ、楓、18センチ。」

老人は箱から棒を取り出すとに握らせ、振るように言った。
ヒョイっと振ると、そこら中の箱が一斉に棚から落ちた。

「いかんか・・・・・ではこれは?ドラゴンの心臓の琴線、杉、28センチ。」

今度は何も起こらない。
ダメだダメだと言いながら老人はまた引っ込んでしまった。

「まだまだ・・・不死鳥の尾羽、イチイの木、33センチ。振り応えがありますぞ。」

今度は嵐のような風が店の中を滅茶苦茶にした。

「これもダメか・・・・・。」

もう何本杖を握ったかわからない。テーブルの上にはこれまで試した杖が山のように置かれている。
オリバンダー老人は考えながらまたまた奥へ引っ込んでしまった。
は老人に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
異世界の人間に合う杖なんて本当にあるのだろうか?は不安になってきた。

「・・・・・・こちらは?」

は半ば諦めながら、杖を握った。
すると、途端に身体が熱くなった。しかも、とても手触りのよいすばらしい杖だ。の手にしっかりと馴染んでいるのがわかる。

「すばらしい!あなたにぴったりの杖ですぞ。」

オリバンダー老人は目を輝かせた。

「私の思ったとおりだ。あなたの故郷は日本、そうでしたね?」

「はい。」

「実に珍しい組み合わせです。私の店にもこの木を使った杖はこれ1本しかない。」

オリバンダー老人は続けた。

「この杖は桜の木で出来ています。
芯には俊足で美しい一角獣の尻尾の毛、長さ30センチ。
この杖が今日からあなたのパートナーです。」

そういいながら手際よく箱を紙で包む。

いつの間にかスネイプがの後ろに立っていた。手にはゴツゴツした袋が握られている。

「ふん!異界のものに合う杖などよくあったものだ。」

スネイプは近寄りがたいオーラを噴出しながら会計をした。

さっきの服屋で仕立て上げられた、制服やローブ、帽子を受け取るとスネイプは「帰るぞ。」といいさっきの暖炉まで戻った。

は歴代記録を更新できそうなほど、最短コースで学用品の買い物を終わらせた。