不思議な城内だった。 映画で見るようなお城だ。何を模したのか分からない不思議な像や豪華な照明器具が上品に陳列されており、天井がとても高い。迷路のように右へ左へ上へ下へと進んだ。 あまりにも早く歩くので、途中の下り階段で躓いてしまった。 きっと全身擦り傷か痣だらけになってしまうと思いながら、目を瞑った。 ・・・・・ところが、痛みは一向に訪れなかった。気付くとは階段の一番下に立っていた。 「お前さん・・・・弾めるのかい?」 大男が言った。 2人は驚いて眼を見開いていた。 何だろう?今、何が起こったのか。 意地の悪そうな男は、何事も無かったようにローブを翻し再び歩き出した。 しばらく歩くと、羽根の生えた奇妙な石像の前で意地の悪そうな男が何か合言葉のような事を言った。すると、石像はピョコンと横に飛び退き、その後ろにはドアが現れた。 どんな仕掛けになっているんだろう? 考える間もなく、は部屋の中へ通された。 部屋の中には用途の分からない器具が沢山あった。 壁には大量の本が綺麗に本棚に収まっている。本棚の無いところには立派な絵画が掛けられて・・・・・?今、絵の中の人物が動かなかったか? 真ん中には大きくて立派な机が置いてあり、その横にかなり髭の長い老人が立っていた。 厳格そうだが、優しい感じの老人だった。丈の長いローブをゆったりと着こなしている。 老人は柔らかくしゃべった。 「やあ、この女性がハグリットの話していた不法侵入のお嬢さんかね?」 「そうでさぁ、校長先生。」 大男が答える。 「違います!勝手に侵入してしまったんです!信じてください!」 「嘘をつくな!」 意地の悪そうな男はを睨んでいった。も負けじと睨み返していった。 「本当です!」 「ほう、勝手にとな?よければどうしてこうなったのか話してくれんかの?」 は自分の部屋で寝ていて、気付いたら先ほどの草原にいたという、改めて話してみると自分でも全く説得力の無い説明をした。 「そなたは何処の人かね?」 「日本です。」 「名は?」 「・です。」 「魔法は使えるのかね?」 「魔法?!」 この老人は何を言っているんだろう。 「魔法なんて、この世には存在しません。」 「そうかね?」 「はい。」 老人は愉快そうに言うと、腰にしまっていた30センチほどの棒をに向け一振りした。 「きゃあっ!!」 途端、の身体は2メートルは宙に浮いた。 「ほっほっほっ、びっくりしたかの?わしらは魔法使いじゃ。ここはホグワーツ魔法魔術学校、若き生徒達に魔法を教える学校じゃよ。」 「ホグ・・・・?」 は静かに着地させられた。 「・・・・ここは、どこですか?」 「イギリスの奥地じゃ。」 なぜ、日本に居たはずの私がイギリスに? 混乱は最高潮だった。 結局答えは見つからず、なぜ?何故?ナゼ?と疑問ばかりで、は泣きそうになった。 しばらく考え込んでいた老人は搾り出すように話始めた。 「残念じゃが、そなたがここに来てしまった理由は今のところ全く分からん。 記憶を消して元居たところに返すことも可能じゃが、少々気になるところもあるでな。見たところ、魔法を習得する才能はあるようじゃ。 ・・・・どうじゃ、帰る方法が見つかるまでここの生徒として生活していてくれんか?」 「校長!?」 意地の悪そうな男はびっくりするほど大きな声を上げた。 「仕方なかろう。原因も分からず魔法界に入ってしまったものをそうやすやすと追放出来まい。」 「しかし・・・・」 意地の悪そうな男はまたも凶悪な目をに向けた。 も、何故ここに来てしまったのか原因が知りたかった。しかし、ここの生徒として生活するには幾つか問題がある。 「あの・・・・、私、この学校で生活するのはいいんですが・・・・・・」 は凶悪な目を無視し、老人に語りかけた。 「その・・・・・私、今年で21歳なんですけど・・・・・・」 3人の目が大きく開いたのがわかった。 「これはこれは!若く見えるのう!」 3人の視線が痛い。意地の悪そうな男は特に上から下から舐めるようにマジマジとを見た。 「そうじゃな、では特別枠の新入生として入学してもらうとするかの。」 「それと私、英語全然出来ないんですけど・・・・」 「今話しておるのは、英語ではないかの?」 「は?」 老人はそこら辺にあった分厚い本を開いてに差し出した。 「声に出して、読んでくれんか。」 「・・・ええっと、『非魔法界の人々(通常マグルと呼ばれる)は中世において特に魔法を恐れていたが、本物を見分けることが得手ではなかった。・・・・』これは・・・・日本語ですか?」 「いいや、英語じゃ。」 「えっ?!」 老人は杖を一振りすると、壁一面の本棚の大量の本の中から一冊が彼の手の中に吸い込まれた。 「これはどうかの?」 は持っていた本を横に置き、差し出された本を受け取った。 開くと、細かくて画数の多い字が大量に並んでいた。書いてあることは一切理解できなかった。 「・・・・・読めません。」 「それは日本語じゃ。」 「うそっ!?」 は再度読んでみた。やっぱり無理だった。 「おもしろい変化じゃのう。」 老人は愉快そうだ。 「あと、私いま手持ちが無いんです。学校に入るっていっても、入学金とか授業料とかいろいろかかりますよね?」 「それは致し方ないことじゃ。学費は免除、その他の雑費は奨学金として負担しようぞ。」 「でもっ!」 「そなたの不安の種は少ないほうがよかろう?」 「・・・・・・申し訳ありません。ではお言葉に甘えさせていただきます。」 「よろしい。 さて、順番が多少前後したが、そなたがここで生活する資格が本当にあるか、ちと試させてもらおうかの。」 老人はヒョイと棒を振ると、今度はボロボロの帽子が飛んできた。 「ホグワーツでは4つのクラスのうち何処かに所属せねばならん。 グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン。どの寮も伝統ある素晴らしい寮じゃ。生徒の性格や器量によって一番相応しい寮に入り、そこがここでの家となる。」 そなたに判断を任せようぞ・・・・老人は尖がり帽子に話しかけた。 「被りなさい。」 老人に手渡され、はボロボロの尖がり帽子を被った。 「う〜ん・・・・・惜しい、実に惜しい。 すばらしい魔女になる才能があるが、これまで発揮されてこなかった。魔法を習得したいという意欲も十分じゃ。君はここで魔法を学ぶといい、グリフィンドール!」 帽子はいきなり叫んだ。 「ほほう、そなたにはここで魔法を学ぶ資格が十二分にあるようじゃ。」 老人は実に愉快そうだった。 「グリフィンドール寮の寮監はミネルバ・マクゴナガル先生じゃが、今ちと学校におらんのでな。セブルス、お主ミス・と一緒にダイアゴン横丁まで学用品の買出しに行ってきてはくれんか?」 「!!」 意地の悪そうな男は、至上最悪の苦虫を噛み潰したような顔をした。 「頼まれてくれんか?」 「・・・・・・・・仕方がありません。」 「頼んだぞ。 新学期は明日から始まる。こらからすぐに向かっておくれ。」 「承知しました。」 「ミス・、こちらはセブルス・スネイプ先生。魔法薬学の先生じゃ。」 「・・・・お手数を掛けますが、よろしくお願いします。」 は深々とお辞儀をした。 後頭部に穴の開きそうな、スネイプの視線が刺さった。 「そしてこちらは、ルビウス・ハグリッド。禁断の森の番をしてもらっておる。」 「ハグリッドだ、よろしくな!」 ハグリッドは握手を求めた。も快く手を差し出す。 「よろしくお願いします。」 「そうじゃ、大事な事を忘れておった。 わしの名はアルバス・ダンブルドア。こんな爺さんじゃが、ホグワーツ魔法魔術学校の校長をしておる。」 「よろしくお願いします。校長先生。」 は一層深々とお辞儀をした。 「さて、もうそろそろ夕刻じゃ。セブルス、急ぐがよかろう。」 スネイプは無言で頷き、に付いてくるように合図した。 |