は机の上に置いてある包みに目をやった。
その中身は魔法で編んだマフラーだ。




ハロウィンの後、ウィーズリー夫人は編み物がうまいという評判を聞いた。
は「これだ!」と思い、ロンに頼んで夫人へ手紙を書いてもらった。


「ママ元気?僕は元気です。
前にも話したと思うけど、特別枠の新入生のっていう女の子が同じ寮の仲良しなんだ。
はママの編み物の腕がピカイチだって噂を聞いてママに編み物の仕方を習いたいんだって!是非、教えてあげてよ!
ロンより」


ウィーズリー夫人は快く了解してくれて後日、編み物の本と編み棒、銀ねず色の毛糸が送られてきた。
毛糸はが夫人にお願いした色だ。

はその日から宿題の合間をぬってマフラー作りに取り掛かった。


(みんなのプレゼントに勇気をもらったような気がする。クリスマスのご馳走を食べる前に渡しに行こう!)
は決意すると、綺麗にラッピングした袋を持って地下牢へ向かった。





人気がなく一層冷え切った教室の奥に向かった。
は少しの躊躇のあと、ノックした。

「どなたか?」

「グリフィンドールのです。」

「・・・・何しに来た?」

「先生にお話があって・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・入りたまえ。」

やけにすんなり入れてもらえた。
スネイプは深々と椅子に腰掛けている。

「クリスマスぐらい、下らない話を聞くのもいいと思ったのだ。しかし、我輩も暇ではない。用件を言ってさっさと帰れ。」

はスネイプの前まで早足で進んで口を開いた。

「あのっ・・・・・ハロウィンの日は助けて頂いてありがとうございました。」

スネイプは答えない。

「ずっと、お礼を言わなきゃと思っていたのですが、言いそびれてしまって。」

はスネイプの顔を見ず、一気に喋った。

「あの、身に着けて貰わなくてもいいので・・・・先生にクリスマスプレゼントです。これ・・・置いておきます。」

はアルコール漬けの不気味なガラス瓶が陳列されている棚の隙間に袋を置いた。

「失礼しました。」

は最低限の言葉だけを発してスネイプの私室を出た。




心のつっかえが取れて晴れ晴れしたはその足で大広間に向かう。
大広間は素晴らしい飾りつけだった。柊や宿り木が綱のように編まれて飾られ12本もの大きなクリスマスツリーが並んでいる。

クリスマスのご馳走も素晴らしかった。
丸々太った七面鳥のローストにローストポテトとゆでポテト。ソーセージにバター煮の豆、どれもこれも美味しそうだ。

テーブルのあちこちには魔法のクラッカーが山のように置かれ、紐を引っ張ると大砲のような音とともにいろいろなおもちゃが出てきた。

クラッカーの大騒ぎの中、スネイプが音もなく席に着いた。






はスネイプの姿を見て唖然とした。


首には・・・・
銀ねず色のマフラーが巻かれている!


絶対、が作ったマフラーだ。
所々ピョンピョン毛糸が飛び出ている。

「セブルス、とても良いマフラーじゃのう。」

ダンブルドアが目を輝かせた。

「ありがとうございます。
ある人からの、クリスマスのプレゼントだそうで。」

生徒たち(スリザリン以外)は一様に目の玉が飛び出るほど驚いている。

「それはそれは、羨ましいのう!」

ダンブルドアはの方をちらりと見て微笑んだ。

は嬉しいやら恥ずかしいやらではやくパーティーが始まるよう祈った。

程なくダンブルドアの宣言で、パーティーが始まった。

はスネイプが気になって食事どころではなかったが、何故マフラーを巻く気になったのか聞いてみたかった。

しかしスネイプは、さっさと食事を済ませ大広間を出て行ってしまった。

はスネイプの背中を見送りながら、身体の芯が温かくなるのを感じ「ありがとうございます」と心の中で呟いた。





それからの休暇もとても楽しかった。
猛烈な雪合戦をしたり、凍りついた湖でスケートを楽しんだり、双子とフィルチを出し抜く作戦を立てたり。







1月1日

はダンブルドアにお願いして
もち米と餡子と醤油を手に入れてもらった。

「ねえ、みんな!新年にぴったりの日本の行事をしない?」

は朝食の席で学校に残っている生徒みんなに呼びかけた。

朝食の後、中庭に集まって持ちつき大会を催した。
ほとんどの生徒が珍しがって参加してくれた。
もちろん先生方にも呼びかけたが、スネイプは現れなかった。

双子のフレッドとジョージにキッチンでもち米を蒸かしてもらってハグリッドお手製の臼と杵で餅を付いた。
(説明はちゃんとしたのに、五右衛門風呂と巨大な棍棒のような出来だったので、背の小さいフリットウィック先生は掛け声係だ)

「よいしょ!」
「はい!」
「よいしょ!」
「はい!」

ペッタンペッタン


ハリーとロンはフラフラと非常に危ない杵使いだ。

マクゴナガル先生の餅の返しは堂に入っている。

ダンブルドアも愉快そうに杵を振った。

双子の息はぴったりでキング・オブ・モチツキの称号をあげた。

仕上げにハグリッドについてもらい千切ってわける。



一つは餡子を乗せて、一つは醤油に砂糖を混ぜた甘辛いタレにつけて

「キャーすごい!赤ちゃんのお尻みたいに軟らかい!」

「この黒いの、甘くて美味しいね!」

「始めて体験しましたけど、日本の行事は面白いですね。」

思った以上に好評だった。

「すごく伸びる商品はヒットの予感がしないか?」
と違う考えに耽っていた子もいたが。

「すごく伸びるから、喉に詰まらせないようにしてね。」
そう言う間に、ロンは早速窒息死寸前だった。


余った餅は後日ハリー、ロンとグリフィンドールの談話室の暖炉で焼いて食べた。

「焼くとまた感じが違うでしょ?」

「焼いたほうが噛み切りやすくていいや!」

ロンは窒息死事件のあと、「二度と餅は食べない!」なんて言っていたのに四つもペロリとたいらげてしまった。